アクネ菌とニキビダニ
アクネ菌
にきびにはいくつかの種類があり、その症状も軽度から重度までさまざまです。中でも赤く炎症を起こし、見た目にわかるのはもちろん痛みや違和感を伴ってきたものを「赤にきび」と呼びます。
このプックリ膨らんだ炎症にかかわっていると考えられているのが、アクネ菌です。
どこかで聞いたことのある響きかもしれませんね。
アクネ菌は、毛の根っこを覆う「毛包(もうほう)」内に常に存在する最近の一種です。
これらを常在細菌と呼びます。
アクネ菌は嫌気性と言って酸素があると生育できない性質があるため、毛穴が角栓によってふさがれて酸素が減少すると、ここぞとばかりに成長を始めます。
毛穴の中で皮脂を栄養として繁殖し、その数を急激に増やしていきます。
増えたアクネ菌が細菌性リパーゼという酵素を生み出し、それらの酵素は、皮脂を遊離脂肪酸(悪い脂)に変化させます。
これらの酵素や悪い脂によって毛包が刺激され、痛めつけられ、赤く炎症を起こしたり、化膿を起こしたり、最終的には周辺組織が破壊されてしまいます。
角栓を作らない、毛穴を塞がないことでアクネ菌の繁殖は抑えられますが、赤く炎症をおこした段階までくると、自己流のケアで治すのは難しくなってしまいます。
無理ににきびをつぶして解決しようとすると、皮膚が陥没してしまったり、黒っぽく色素沈着してしまうことになりかねません。
できてしまった皮膚のでこぼこや色素沈着などのにきび跡を修復するのは大変難しいそうです。
早めに皮膚科のお医者さんで診断と治療を受けてください。
ニキビダニ
ニキビダニ は、哺乳類の皮膚の様々な分泌腺に寄生しています。全ての種の哺乳類に、特異的に種分化したニキビダニが寄生していると考えられていて、しかもヒトには2種のニキビダニが異なる部位に寄生しているように、皮膚の上の異なる種類の分泌腺ごとに種分化が起きていることもあることから、現生哺乳類種数4千種あまりを上回る、少なくとも5千種以上の種が存在すると考えられています。主に毛包部に寄生するため、毛包虫とも呼ばれています。
ヒトは、特に顔面で皮脂腺が発達しているため、ニキビダニは顔における寄生密度が高いことから「顔ダニ」とも俗称されており、また学名をかな書きしたデモデクスの名でも呼ばれることがあります。
人体には毛穴の毛包に皮脂腺の導管部が開口している部分か、それより浅い部分には体長約290μmのニキビダニがしばしば6〜8個体の群を形成する一方、皮脂腺内部には体長約200μmのコニキビダニといわれる異なるダニが単独で寄生します。餌となるのは、ニキビダニは毛包上皮細胞で、コニキビダニの場合は皮脂腺の細胞であると考えられています。
ニキビダニは、にきびの内部から多数検出されることもありますが、必ずしもにきびに寄生するというわけではなく、健康な皮膚から、ごく普通に検出されています。著しい多数個体のニキビダニがにきびに寄生していた場合、そうした寄生密度の高さがにきびをもたらしたのか、ニキビダニ密度の上昇に先行する、にきびを引き起こす何らかの病変が寄生密度の高さをもたらしたのかを検証することは、困難なようです。
一方、一部の化粧品会社やマスコミなどがニキビなど皮膚病、肌荒れの原因と喧伝しているようですが、一般的には実害はほとんどありません。むしろ、ほとんどすべての人に寄生する、いわゆるニキビダニへの不安を煽ることによって無用な恐怖心が引き起こすしているとの指摘もあります。
例えば、寄生虫についての啓蒙書を多数執筆している医学者、藤田紘一郎も、不安をあおることを懸念して初期の著作であえてこのダニのことを紹介することを避けていたことを自らの著作の中に記しています。
しかし、副腎皮質ホルモン剤を顔面に外用したり、免疫不全を生じる疾患に罹ると、ニキビダニは著しく過剰な増殖が起こり、皮疹を形成するに至ることがあるともいわれています。
ちなみに、毛根原虫症を引き起こす毛根原虫とニキビダニは別物です。
毛根原虫は、毛根周辺に寄生する原虫で、現在、日本国内で200万人程度の感染者がいるといわれますが、トリクロサンによる消毒等の対症療法しかなく、未だに抜本的な治療法はありません。
ニキビダニの生態
ニキビダニの生態は、卵から幼虫、第1若虫、第2若虫を経て、合計3回の脱皮で成虫になります。
ニキビダニに抗生物質を添加した皮脂を与えて飼育したときを調べた数字によると、それぞれの期間は卵が60時間、幼虫が36時間、第1若虫が72時間、第2若虫が60時間、そして成虫の寿命が120時間といわれ、産卵から死ぬまでの寿命は約14日ほどと推定されています。
これは、各ステージの期間をつなぎ合わせた期間で、実際の寿命はこれより長くなる可能性もあると指摘されています。完全な人工環境下で生活史を再現した飼育研究は、まだ知られていないそうです。
ヒトなどへの寄生率は100%という報告もあり、ほとんどすべてと言ってもよいほどの割合で、人の皮膚に寄生しています。
しかしながら、生まれたばかりの新生児には寄生していないが、親が抱いたり頬ずりしたときに感染するようです。このとき感染に与るのは、毛穴の外に出て周囲を徘徊する行動を示す第2若虫のステージのものと考えられている。こうしてニキビダニは幼児から高齢者まで広くその寄生が見られるが、コニキビダニの場合、幼児から若者にかけての若年者ではあまり寄生が見られないという報告もある。